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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

その八

……」

そうして弱い高は、何といっても実際は工夫の方がいいということを知っていながらも、無理にとは言いかねて、この苦しみのうちに縛りつけられているのだった。

その八

やはり私が五年生の時分だった。いや、五年になったときだった。二、三十名の児童が新たに入学したうちで、一人、器量のいい、無口で、温和しい、どことなく寂しそうな、それでいて大変悧巧な女の子があった。私は何となくその子が好きであった。するとその子にも私の心がおのずと通じたのか、いつとはなしにその娘も私の側によって来て甘えるようになった。私はますますその子が好きになった。そうして私達はまるで、姉と妹とのような睦じい日を学校で送った。

私にはそれがこの頃の唯一の楽しみだった。うちでは私は愛されない、けれどこの子には愛し慕われる。そして私は私の愛するものをこの子のうちに見出す。ああ、もしこの頃の私にこの喜びがなかったなら、私は生きている心持ちもしなかったであろう。

その子はたみちゃんといった。たみちゃんは学校から一、二町離れたところで下駄や文房具を商っている家の娘であった。父はたみちゃんの小さい時分に死に、母は実家へ戻されたので、たみちゃんと妹との二人は祖父母の手で育てられていたのだった。