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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

仕事へ! 私自身の仕事へ!

「話ッて何なの?」と私はきいた。

「話というのはですね」と玄は例の通り廻りくどい表現でもって、趙と二人で独逸へ留学することになったから、おわかれをしなければならぬということを話した。

私はもう諦めていた。

「そうですか、それは結構です」

「おわかれに愉快に遊びましょう」と趙は言って、洋食だの酒だのを取った。

私は別に悲しいとも、悔やしいとも思わなかった。ただ絶望的な気分がぶつぶつと沸きたっているのを感じた。

無茶苦茶に私はウイスキイを呷った。どのくらい飲んだのか、とにかく、足腰のたたぬまでも飲んだ。

こうして私は、大叔父の家にもいたたまらなくなった。失った恋に傷ついた胸を抱いて、大叔父の家を私は出た。

仕事へ! 私自身の仕事へ!

大叔父の家を出た私は、日々谷に在ったある小料理屋にころがり込んだ。

それは「社会主義おでん」の名で通っている店で、主人は社会主義の同情者でもあり、自分も一ぱし社会主義者顔をしていたので、かえってそれが呼びものとなって、新聞記者だの社会主義者だの会社員だの文士だのといった社会の一部のインテリ連を多く集めていた。

私はここで、昼間客を接待し、夜は学校に通った。