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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
その十五
私もまた、頂からおりて栗林の中に這入る。
晴やかな気持ちになった私は、我知らず学校でならった唱歌を歌い始める。誰もそれを咎めるものがない、小鳥のように私は自由だ。歌い、歌い、声の嗄れるまで歌い続ける。時には即興に自分の歌を歌う、常々の押し込められた感情が自由に奔放に腹の底から噴き上げて来る。そしてそれが私を慰める。
咽が渇くと栗番小屋の側の梨畑から採って来た梨を、皮も脱かずに、滓ぐるみ呑み込んでしまう。そしてまた地上にごろりと寝そべって木の間から漏れる雲間を眺める。咽ぶほど強烈な草いきれや、茸のかおりが鼻につく、私はそれを貪るように吸い込む。
ああ自然! 自然には嘘いつわりがない。自然は率直で、自由で、人間のように人間を歪めない。心から私はこう感じた、「ありがとう」と山に感謝したくなる。同時にまた、ふと今の生活を思い出しては泣きたくなる。そしてその時には思う存分泣くのであった。だが、いずれにしても山に暮す一日ほど私の私を取りかえす日はなかった。その日ばかりが私の解放された日だった。
その十五
暑い夏のまさかりだった。
江景というところで独力で病院を経営している福原という人の細君が、祖母を訪ねて来た。