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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

その七

私の胸は、いつも暗く重々しかった。それでいて私は、いつもそわそわして、おびえて、落ち着きがなかった。

その七

こうして自分のことを記していると、下男の高のことを憶い出さずにはいられない。そして些しでも彼のことを書いてやらねば済まないような気にもなる。

高は余り悧巧な男ではなかったが、その代り正直で、素直で、その上珍らしいほどの働きものだった。わずかの間もずるけずに何かしていて、主家の物などは間違ってもちょろまかすような男ではなかった。

家族は夫婦と三人の子供とであった。上の娘は器量よしなので、玄米三斗で買いたいという男もあったが、十二、三にもなれば大丈夫百円には売れるから今売るなと祖母にとめられて、困りながらも辛抱して養っていた。

月給は一般の相場よりは二、三円も安く、わずか九円かそこいらであった。だが、それも初めの間のことだけで、間もなく祖母は、現金を出すよりも米をやった方が得だという考えから、何とか理窟をつけて、うち二円だけは五升について二銭だけ安く見積った米をやることにした。――特別にわるい米を。

そんなわけで、高は非常に貧乏していた。彼の家内の誰だって腹一ぱい飯を食うことができなかった。