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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
その五
哀れな服部先生よ、と、私は今は言いたい。
その五
十二、三の時から私は勝手元で祖母の手伝いをさせられた。岩下家の後嗣ぎから女中に貶されたのだ。
女中にされた私は、家事万端をしなければならなかった。冬の寒中に米もとげば、手拭を冠ってオンドルの下に火もたいた。ランプのホヤ拭きから、便所の拭き掃除までもした。私は別にそれを不服には思わない。むしろ人生の修業をさせてくれたことを感謝してもいい。
けれど、けれど、何といっても人は人である。殊に私は女である。随分辛いことがあった。
春だったか秋だったか、雨のそぼふる薄ら寒い日だった。叔父は謡の会に出て行き、下男の高は庭先の米倉の軒下で米を搗いており、部屋の中では、障子をしめきって、祖母が三味を弾いて叔母が踊りのおさらいをしていた。
静かな日だった。私はただ独り、竈の前の土間にしょんぼり蹲りながら、だるそうに打ち落される杵の音や、しょぼしょぼと降る雨の音や、しっとりとしめやかにきこえて来る三味線のしらべに聴き入りながら、何とも言えぬわびしさに浸り込んでいた。
私はその寂しさのうちの静かさを愛していた。が、やがて、菜もゆだったので、湯から揚げて水に浸した。