轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

母

母

父に捨てられた私達はただ途方にくれた。初めのうちはまだ、売り食いをするだけのものがいくらか残っていたけれど、それもすぐになくなってしまった。父からはもとより鐚一文の仕送りもなかった。

だが、私達は生きなければならない。で、母がその後、中村という鍛冶職工と同棲するようになったことを私は、非難すべきではなかろう。

「その人はいい日給取りなんだよ。何でも一日一円五十銭だってことだから……そうすりゃ、今までよりはずっと楽にもなるし、お前を学校にやることもできるからね」と母が私に、何も知らぬ頑是ない私に、宥恕を乞うような口調で言ったのを私は覚えている。

中村は小さな風呂敷包を抱えて来て、いつの間にか私達の家で寝起きするようになっていた。毎朝彼は、菜っ葉服を着て、弁当箱をさげて、少し離れた工場へ通った。

中村はその頃四十八、九歳だったろう。胡麻塩頭に、底意地わるく眼が窪んで、背が低くて猫背で風采のわるい男だった。若い頃はかなり上品で貴公子然としていた私の父、しかもいやに労働者風情を軽蔑した父、その父に知らず知らず感化されていた私には、この風采のわるい中村に親しむことはおろか口をきくのもいやであった。