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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
女中奉公
と冷たい一瞥を投げたばかりであった。
眠りを破るのを遠慮して、借りている部屋にも帰らずに露天に寝たり、自分の用さえ足しかねるほど忙しい苦しい身でありながら、しないでもいい便所の掃除までしたそれらの心づくしは、遂に何ものにも価いしなかったのである。基督教の教えるところは果して正しいのであろうか。それはただ、人の心を胡魔化す麻酔剤にすぎないのではなかろうか。人間の誠意や愛が他人に働きかけて、それが人の世界をもっと住みよいものにしない限り、そうした教えは遂に何らかの欺瞞でなくて何であろう。
女中奉公
秋原さんの世話で私は、浅草聖天町の仲木という砂糖屋に奉公することとなった。
この家には五十四、五になる夫婦と、若夫婦と、若夫婦の子供が二人に、弟が二人のほかに、店員と女中とが各々一人ずつ、それに私を混ぜて都合十一人の家族が住んでいた。
老主人というのは店を息子に譲って自分は家のことは何一つせず、いつも家を空けて外にいたが五日に一度ぐらいしか戻って来なかった。これは後で知ったことであるが、この老主人は何でも浅草公園附近の待合に入りびたって、似寄った連中と夜昼ぶっ通しに賭博をしたり飲んだりして日を送っているらしかった。