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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

私達の健康が快復すると、私達はまた引越した。それは横浜の街はずれの、四方を田に囲まれた、十四、五軒一叢のうちの一軒だった。そしてその家へ引越した冬のある雪の降る朝、私に初めての弟が生れた。

私が六つの年の秋頃だった――その間私は、私達の家が無闇に引越したということだけしか覚えていない――私達の家に、母の実家から母の妹が、だから私の叔母がやって来た。叔母は婦人病かなんか患っていたが、辺鄙な田舎では充分の治療が出来ないというので、私達の家から病院に通うためだった。

叔母はその頃二十二、三であったろう。顔立ちの整った、ちょっと小綺麗な娘だった。気立てもやさしく、することなすことしっかりしていて、几帳面で、てきぱきした性質であった。だから人受けもよく、親達にも愛せられていたようでもある。だが、いつの間にかこの叔母と私の父との仲が変になったようである。

父はその頃、程近い海岸の倉庫に雇われて人夫の積荷下荷をノートにとる仕事をしていたが、例によって何かと口実をつけては仕事を休んでいた。そんな風だから私の家の暮し向きの裕であるはずはなく、そのためであろう、母と叔母とは内職に麻糸つなぎをしていた。