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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
独り家の中に残された私は、この間に何か食べようと思った。が、食べものは何も見つからなかった。やっと私は、祖母の部屋の真うらの、広い廂の梁に、いつも金網張りの四角な「蠅入らず」があることを思い出した。私はそっとそれを覗いて見た。が、その中には何もなかった。そこで台所の隅に置いてある「鼠入らず」の戸を音のしないようにそっとあけて見た。が、そこにもやはり何もなかった。いつもあるはずの砂糖壺すらも。
私はまた自分の部屋に帰った。部屋に這入ると、手探りで蒲団を敷いて蚊帳を吊った。寝間着に着かえる力もなく、そのまま私はふとんの上に寝そべった。
庭では、近くの南さん夫婦の声も交って陽気な話し声や笑い声があがっていた。その声が耳についてなかなか眠れなかった。
私は祖母たちを恨んだ。がまた、自分のしたことはほんとに、わるかったのだろうかと考えても見た。何とかして、ほんとにわるかったということがわかってほしいと思った。が、わからなかった。一時すぎになって私はやっと眠りついた。
翌朝、眼が覚めたときはもう、朝日が上っていた。高はいつものように庭掃除に忙しく、祖母は台所で朝御飯の仕度をし、叔母は私の役目である部屋の掃除に障子や置物をバタバタとはたいていた。