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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

「ああ、ふみか、よく帰って来た。まあ大きくなったこと!」と叔母も私を歓迎してくれた。

庭の畑に出ていた祖父も、裏側の自分達の部屋で蚕に桑をやっていた祖母も、私の声をききつけて駆け出して来た。

「おお、ふみだ。やっぱり帰って来ただ。俺や余り突然だったで、何かの間違いでないかと思っていただ。よう帰って来た」と祖父が言えば、

「大きくなった、達者だったかい? 何にも音沙汰がないで、心配してただよ」と祖母が附け加えた。

私は井戸の水で足を洗った。千代さんも同じようにした。そしてむさくるしいながらも居心地のよい座敷に上った。

やがて昼食だったので、みんなと一緒に食膳についた。貧しい食事であった、が私はそれを山海の珍味のように味わった。少くとも食物がすらすらと喉もとを通るのを有難いと思った。

食事をしながら叔父たちはいろいろのことを訊ねた。朝鮮のこと、芙江のこと、叔母の家のこと学校のこと、かいつまんで、断片的に私は話した。けれど、朝鮮でどんなに苦しめられたか? どんなに辛かったか、どんなに苛められたか、そういったようなことは一つも話さなかった、話さなかったが、一切は察しているといったような風を叔父たちは見せた。