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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
七年目に帰って来て見た実家の方の様子はしかしかなり変っていた。祖母はやはり母家を仕切って裏側の部屋に住んでいたが、間の檜戸は堅く釘づけにされて開かなかった。裏の泉水は木の葉や泥で埋もって浅く汚くそして濁っていた。曽祖父の丹精した植木園は見る影もなく荒れていた。母屋の西側にあった二棟の倉は壊されて、跡には葱が作られていた。
家の中の空気もまた、変っていた。同じ軒下に住んでいる祖父母と叔父夫婦との仲がとかく円滑を欠き、――仕切戸の堅く閉されたのもそのためらしかった――この親子の二家族も別々になっていた。祖父母は屋敷内の畑を作り、小遣銭取りには少しばかりの蚕を飼って細々と暮しており、叔父はからだが弱い上に百姓が好きでないというので、主に呉服物や古着類の行商をして生計を立てていた。子供はもう四人もあって、以前私が背負って学校へ行った長女は、かつて私がここにいた頃の年齢――九ツ――になっていた。
母は他家に嫁いでいるとはいえ、もとの塩山の家ではなかった。塩山の商家に落ち着くことのできなかった母は、私が朝鮮へ立ってから間もなく帰って来て、再びまた製糸場に働いていたが、円光寺の和尚の知合いに当るある僧侶に嫁ぎ、それもこの上ない貪慾な坊主だというので二ヶ月経つか経たぬ間に飛び出して来て、昔、母の実家の羽振りのいい時分