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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

そして帝都は遂に四方から起った大火災によって黒煙に閉されてしまった。

激動、不安、そして遂にあの馬鹿気きった流言と騒擾だ。

それから間もなくであった。私達があの、帝都の警備に任じているものの命令によって警察に連行されたのは。

何のためであったか。私にはそれを語る自由がない。私はただ、それからしばらくして、東京地方裁判所の予審廷に喚ばれて取調べを受けたということだけを語り得る。

看守に導かれて予審廷のドアをくぐると、そこにはもう、一人の法官が書記を従えて私を待っていた。私の姿を見ると、廷丁は私のために被告席を用意し始めた。その間私は、冠っていた深編笠を手に、部屋の入口のところに黙って立っていなければならなかった。判事はそれを、冷静な態度でじっと瞶めていた。

やがて私は被告席につかされた。判事はなおしばらくの間、私を腹の底まで観察しなければ止まぬといった風に眺めてから静かに口をきった。

「君が金子ふみ子かね」

そうだと私が答えると、彼は案外やさしい態度で、

「僕が君の掛りでね、予審判事立松というものです」と自分を名乗った。

「そうですか。どうかお手柔らかに」