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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

一つの地獄を逃れて来て、また他の地獄に押し込められたのである。私には、それから逃れる力がなかったのだ。私はまだ一人前の人間ではなかったのだ。私には自分の好きな途に進んでゆくに必要なお金がない。私は私でない生活に縛りつけられねばならないのだ。

こうした境遇に置かれた時、私が自暴自棄的な気持ちになったのは咎めらるべきであろうか。無論私は、咎めらるべきである。私は私自身の生命を冒涜しているのである。けれど、けれど、少くとも私は、こうした生命の冒涜に対して寛容されてもいいと考える。誰も私を理解してくれず、誰も私に同情してくれないから、私は私自身で自身をいたわってやりたい気がする。

やけになった私は、家のことなどは何もしなかった。子供のお守はおろか、自分の食べた茶碗さえろくに洗おうとはしなかった。何一つ身に沁みてする勇気が私にはなくなっていたのである。

瀬川は土地の中学の四年生だったが、退校したのかさせられたのか、とにかく彼は、私が小松屋に来た時分にはもう東京に出て、簿記学校に通っていた。私は彼と文通を続けた。が、それと同時にまた、出来る限りの範囲で叔父のところを訪ねていた。