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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
その上、売れ行きが鈍くていつまでも減らないので、その重さったらなかった。そうして私は、その重みに肩の骨がへし折られるのでないかと思うほど痛いのを感じるのであった。が、まだそれだけではない。片手には重い番傘をさしているのであるから、新聞を渡すのにも釣銭を出すのにも一切合財片手でしなければならぬので、新聞を地に落して泥だらけにしたり、まごついたりして、来合わせた電車に乗ろうとあせっている買い手に「ぐずぐずしないで早くくれなきゃ困るじゃないか」などとけんつく喰わされるようなこともあるのだった。
ある夜、私は、出ばなの小一時間をひどい夕立にやられた、そのために客足がぱったりと止んで新聞は少しも売れなかった。で、もうやがて十時だというのに紙は半分以上も残っているという始末だった。その頃はもう雨も止んでいるのに、夕立に驚いた人々はみんな家に帰ってしまったし、雨の止んだ時分はもう外出には遅いしするので、人通りは常の三分の一もないほどだった。
でも私は、どうかして売らなければならなかった。私は嗄がれた声を張りあげて「ゆうかーん、ゆうかーん」と叫んだ。だけどもうその頃になっては誰も夕刊を必要としないといった風に行き過ぎた。