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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
水曜日か木曜日だった。いつもなら戸が締っているのだが、何か集会でもあるのか、電灯があかあかと輝いていた。人の集まっている気配であった。
いささか気おくれがして、私はしばらく、その前に立って躊っていた。が、いつまでもこうしてはいられぬので、思い切ってドアを開いて中に這入って行った。
三十名近くの人がベンチに腰をかけていた。前から二、三番目のベンチにかけていた伊藤はいちはやく私を見つけてやって来た。
「とうとう出されたんです」と私は、伊藤を見るなり言った。
伊藤は私を土間の隅の方につれて行って言った。
「話は後でゆっくり伺いましょう。今晩は神田の本営からK少佐が特別講演に来られるので、臨時集会が開かれているんです。もうやがて始まるでしょう、いいところへ来ました。まあ掛けておききなさい」
私は伊藤に案内されて婦人席の方に腰をおろした。伊藤は小さい聖書と讃美歌集とを持って来て、その夜、講義されることになっている箇所をあけてくれた。そして自分はまた、もとの席へと帰って行った。
私は聖書なんか読むどころでなかった。不安な思いばかりが胸の中を往来した。穴の中へでも引き込まれるような心細さがひしひしとせまってきた。