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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
それに気づいた隣のお爺さんが遂に私に言った。
「姐さん、それじゃいけねえな、人間てな変なもので、早い話がたった一帖の紙を買うのにも、出来るなら大きな立派な店で買いたがるものだよ。だから不景気な店はますます不景気になり、繁昌する店はどしどし繁昌するってな道理だ。で、売ろうと思うにゃやっぱり店を立派にしとかなくちゃね」
全くだった、日が経って、商品が少くなるにつれて、だんだんと売れなくなった。そしてそれと共に、私の懐工合もまただんだんと悪くなった。「ああ二十円の金が欲しいなあ、二十円あったら夜店をやって苦学して行けるんだがなあ」と私は始終思った。
でも、ぶっ続けに立ち通しの夕刊売りに較べると、ずっと楽なので、売れても売れなくても私は、皆の引き上げるまでは夜露を全身に浴びながら、夜の路傍の地べたに座っているのだった。
引き上げは大概十時頃だった。それから私は湯島まで十二、三町をテクテクと歩いて帰るのであるが、家に着くのはほぼ十一時すぎだった。そしてその頃にはもう大抵の場合、家のものは戸を締めて寝ているのだった。
私は、商売道具の風呂敷包を片手にぶらさげたまま、片手でそおっと戸をゆすぶって「おかみさん、おかみさん」