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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

が、家の人たちは、伊藤をも私をも信じていたから、決して私達を怪しみはしなかった。

その頃の私は、学校という重荷をちょっと肩からおろして置いただけに、生活には割合楽であった。で、今までとは反対に、私が伊藤を助けることの方が多くなった。

心づけなどに貰ったお金が一円でも二円でも溜まると私はそれを伊藤にやった。そうでない時には、何かしら伊藤にやるものを考えていた。そして、別に用もないのに十二時一時まで起きているこの家の習慣から、その間に生れて来る自分の時間を利用して、何かしら伊藤のために造っていた。

ある夜私は、例によって伊藤を送り出して行った。ちょっと嵩のある風呂敷包を抱えて、裏口から私は伊藤の後を追って行った。と、それを伊藤が見つけて、

「一体、それ何です?」と怪訝そうに訊ねた。

「これ? これね、もう大分寒くなったでしょう。で、あなたに座蒲団こしらえて上げたの。それから枕もね」と私が答えて「ねえ、あなたは座蒲団もなし、枕が汚れてるでしょう?」と言うと、

伊藤はびっくりして、

「どうしてあなたは僕の枕の汚れてることまで知ってるのです」と訊き返した。

「どうして知ってるって? それはねえ、この間あなたのところへ、うちの番頭さんが寄って昼寝したでしょう。