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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
けれど、そう思えば思うほど、私自身が彼に引きつけられて行くのをどう仕様もなかった。そうして、つい幾度か家をあけ、外泊して、何とはなしに家に帰るのさえ心苦しくなっているのだった。
「あああの話ですか」と玄はすぐに応えたけれど、その顔は明らかに当惑げに見えた。「あの話は……そう、今、家を探しているんですが、そして家もあるにはあるんですが……上野の友だちの借りた家があるにはあるんですが、友だちが郷里に帰っていて、ラチがあかんので……でも、近いうちには何とかきまります。きめましょう」
やっぱりいつものように捉えどころのない言葉だった。体裁よく遁げを張っているのだということが、私にはよくわかった。
「そう?……」と私はそこで考え込んだ。
今、何と言っても仕様がない。やっぱりこの捉えどころのない言葉を信じて当てもなく待つよりほかに途はない。けれど、それならそれと、昨夜のことをでも花枝さんの前に繕わねばならない。私はそこで、玄に言った。
「じゃ、それはそれとしてね、昨夜は久能さんとこへ行くって出て来たんでしょう。だからこのまま帰るのは何だか工合がわるいの。それで私、久能さんとこへ行って来たという証拠になるものを何か欲しいんだけど、考えて見ると、この春、私の着物を久能さんが質に入れたのがあるが、久能さんのところへ行って来たという