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なにがわたしをこうさせたか

何が私をこうさせたか

金子 ふみ子

――獄中手記――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页

青空文庫

私はそれから、朴烈についていろいろのことを鄭に訊ねた。鄭の言うところによると、彼は今まで人力車夫や立ちん坊や郵便配達や人夫なぞをしていたが、今は別にこれという職がなく、ただ一晩一晩と親しい友人の処を泊り歩いて過ごしているらしかった。

「それじゃあの人、まるで宿なし犬見たようね、それでいてどうしてあんなにどっしりしているのだろう? まるで王者のような態度だわ」

「ああして友人のところを廻って食いつなげる間はねえ」と鄭は多少軽蔑的に言ったが、私がそれに不服そうなのを見て、「でも偉いですよ、あの男は。あの男ほど真剣に考え、真剣に行動するものは我々の仲間でもそうたくさんはありませんよ」と言った。

――そうに違いない、そうに違いない。と私は心の中で叫んだ。

何ものか私の心の中でいていた。何ものか私の心の中に生れていた。

彼のうちに働いているものは何であろう。あんなに彼を力強くするものは何であろう。私はそれを見出したかった。それを我がものとしたかった。

私は鄭と別れた。別れて店に帰った。

途中私はまた思った。

――そうだ、私の探しているもの、私のしたがっている仕事、それはたしかに彼の中に在る。