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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
それにしても村の人の生活をこんなに惨めにするものは何であろう。遠い昔のことは知らない。徳川の封建時代、そして今日の文明時代、田舎は都市のために次第次第に痩せこけて行く。
私の考えでは、村で養蚕ができるなら、百姓はその糸を紡いで仕事着にも絹物の着物を着て行けばいい。何も町の商人から木綿の田舎縞や帯を買う必要がない。繭や炭を都会に売るからこそそれよりも遥かにわるい木綿やカンザシを買わされて、その交換上のアヤで田舎の金を都会にとられて行くのだ。
ところが、部落はもちろんそんなことをし得なかった。お金という誘惑があるものだからお金欲しさに炭や繭を売る。すると町の商人は、これにつけ込んでこんな部落にまで這入って来る。行商人は、半襟を十枚ばかり入れたのが一函、昆布や乾物類が一函、小間物が一函、さまざまの乾菓子を取りまぜて一函といった工合に積み重ねた高い一聯の重ね箱に、なお、下駄や昆布や乾物等をも加えて、大きな背負包みに包んで背負って来るのであるが、それが一軒一軒に立ち寄って荷物を開くのではない。比較的裕福な家の炉端がその臨時の店棚となる。
「商人が来た」
誰言うとなく部落じゅうに伝えられる。