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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
実家では、祖父母は母屋を仕切って裏の方に隠居し、母から三番目の叔母は二里ばかり離れた町の商家に嫁づき、小さい叔父は出家し、大きい叔父――私たちを迎えに来てくれた――が後を嗣いで戸主となり、二つになる子供さえあった。
私は叔父の家に引きとられた。母は私の大きくなるのを待つ間、若かったときに通った製糸場に稼ぎに行った。
私はもう寂しさを知ってはいたが、それでも何とはなしに心に安心があった。落ち着いた気持ちで日が過ごされた。
ところが、ああ、何という不幸で私はあったろう、その夏のある夜、ぐっすり眠り込んでいた私は突然叔母に喚び起こされた。睡い眼をこすりながら叔母について行くと、思いがけなくも母が来ていた。帯をといたまま台所続きの茶の間で御飯を食べていた。
母は私にモスリンの単衣と丈長とを買って来ていた。無論私は嬉しくなかった。けれど私は同時にまた、「また母が仕事をやめて帰って来たのかしら」と心のうちでおどおどした。家には別段変ったことはない。母は遠い町に働きに行っていたはずだ。どうして今時分帰って来たのだろう。私にはわからなかった。けれど私は母にも叔父にも叔母にも何も訊かずにまた眠った。