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なにがわたしをこうさせたか
何が私をこうさせたか
金子 ふみ子
――獄中手記――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 191,571 字 · 383 页
という私の不安と、これである。私はしかし、これくらいのことで決して私の希望を失ってはいないのだ。私は私を待っていてくれる幸福の神を掴まねばならぬ。
私はいよいよ朝鮮に着いた。朝鮮の私の家に着いた。そこは忠清北道の芙江というところで、家は岩下とよばれていた。
岩下? 読者は恐らく、ここで疑惑の眼を私に向けるであろう。なぜなら、私の家は佐伯であるのに父の母の家が佐伯ではなくして岩下となっているからである。私はまずそれを説明しておかねばなるまい。
祖母は十五、六の年に広島で結婚した。ところが、二十七の年に九つを頭に四人の子供を残して祖父に先立たれ、引き続いて、末二人の子供に死なれた。しかも長男――私の父――はやがて家を飛び出してしまったので、家にはたった一人の女の子、今の叔母が、残ったばかりであった。その私の叔母は広島で女学校を卒業した。するとすぐある海軍軍人から求婚されたが、祖母は考えるところあってこれを断った、次ぎの求婚者は今までかつて知らなかった一人の官吏であったが祖母は一目見て「この男なら」とその男を見込んだ。そして立ちどころに婚姻が成立し、長男の私の父がいなくなっておるのにもかかわらず、その男を養子としてではなく、正式にその男のもとに私の叔母をやった。