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だいうちゅうえんせいたい
大宇宙遠征隊
海野 十三
「国民五年生」1941(昭和16)年4月号~(終号未詳)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,967 字 · 109 页
もう一つの引きつぎ事項を、三郎は、胴わすれしてしまった。
「まあ、いいや」
で、三郎は、扉を押して中に入った。
中には、太陽光線と同じ色の電灯がついている。その電球は、天井一面のすり硝子の中に入っているので、下からは見えない。その代り、天井の上に、本物の太陽の光が、さんさんと照りかがやいているような気がする。とにかく、ここは艇長室だから、とくにいろいろ気をつけてあるのだった。
部屋の正面に、ジュラルミンの扉がはまっていた。その扉には、薄彫りの彫刻がしてあって、神武天皇御東征の群像が彫りつけてあった。これは、今大宇宙を天がけりいく、われら日本民族の噴行艇群にうってつけの彫刻だった。
かたん、かたん、かたん。
コーヒー沸かしの蓋が鳴っている。三郎は、おどろいて、その傍へいった。すこし沸きかたが早かったようである。
扉の向こうで、ぐうぐうと、うわばみみたいないびきが聞える。それは、艇長辻中佐の寝息にちがいなかった。中佐のいびきと来たら、これはだれも知らない者はない。
三郎は、コーヒー沸しの前に、椅子をもっていって、腰を下ろした。そして、手をのばして、地球儀になるゴム風船が、ぺちゃんこのまま、いくつも押しこんである箱を手にとって、その中をさがしはじめた。