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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1933(昭和8)年12月~1934(昭和9)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 120,290 字 · 239 页
若しかしたら、今まで首領とばかり信じていた青眼鏡は首領でなくて、このちっぽけな奴が、恐るべき殺人団の張本人なのではあるまいか。
気がつくと、手を離していた間に、怪物は力を恢復して、やっぱり不気味な泣声を立てながら、手足をもがいて、一生懸命に起き上ろうとしていた。
「畜生! 逃がすものか」
守は俄かに燃え立つ憎悪を、もう無我夢中になって、怪物の喉のあたりを締めつけた。拇指に力を入れて、グイグイと締めつけるにつれて、嗄れた泣声が、苦し相に衰えて行った。
怪物は、守の手の下で、窒息しそうになっているのだ。もう一分間、この圧迫を続けたら、彼は死んでしまったかも知れない。
だが、丁度その時、どこからともなく庭の樹立をくぐって、物の怪の様な黒い人影が、守青年の背後にソッと忍び寄って来た。
その黒い影の手には、白布を丸めた様なものが握られていた。それが矢の様な素早さで、青年の顔の前に飛びついて行った。
守は突如として、異様な臭気を発する柔い物体が、口と鼻を覆うのを感じた。振り払おうとすればする程、その物体は、益々固く密着して来た。
叫ぶこともどうすることも出来なかった。