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「てらだとらひこのついそう」あとがき

寺田寅彦 わが師の追想

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『寺田寅彦 わが師の追想』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「寺田寅彦の追想」後書、実験室の思い出、墨流しの物理的研究、墨並びに硯の物理学的研究。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,239 字 · 65 页

青空文庫

その話は科学的研究方法の模範であり、ちょっと探偵小説風な興味もあって、非常に珍しい話なのである。

私たちも初めのうちは、まさかそんなことが分かるわけもなかろうと、ぼんやり言い付けられた実験をやり始めたのであるが、暫くすると先生の快刀乱麻を断つような推理の冴えに魅せられて、夢中になってその実験に没入した。それは本当に没入したと言って良いので、湯本君も私も熱に浮かされたように、毎晩十二時すぎまで問題の飛行船の皮であるところの球皮ととり組んでいた。色々な秘密がつぎつぎと見えて来た。それを先生は、まるで嚢中に物を探るようにとり出して並べて行かれた。私は、その後も、あの時ほど自分の頭の振り子が最大の振幅で動いた経験を持たない。

いよいよ爆破の原因が無線発信にあったことが分かったのであるが、査問会の方はある事情でそれをなかなか認めない。その事情というのが先生を興奮に導き、私たちを駆って原因探究の実験に熱中させる一つの要因でもあったのである。査問会の物々しい席上にも私たちまで顔を出し、最後に立会実験までもした。偉い方々を例の窮屈な実験室へ招いて、模型飛行船、と云っても他愛ないものであるが、それを無線発信の際に出る小さい火花で爆破させて見せるというような騒ぎにまでなったのである。