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「てらだとらひこのついそう」あとがき

寺田寅彦 わが師の追想

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『寺田寅彦 わが師の追想』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「寺田寅彦の追想」後書、実験室の思い出、墨流しの物理的研究、墨並びに硯の物理学的研究。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,239 字 · 65 页

青空文庫

乗組員は全部焼死して、黒焦げの機械の残骸が畑の中で発見されたのであった。その重大事件には早速査問会が開かれて、先生もその一員に加えられたのである。問題は以上の材料、即ち爆破の場所と時刻、それに器械の残骸と、これだけの資料から爆破の原因を究明して今後の対策をはかるというのである。この恐ろしい難問を、先生は真面目に引き受けられたのである。

冬の初めのある日、水素の仕事も大分進捗していた頃のことである。先生は珍しく少し興奮されたらしい顔付きで、実験室へはいって来られた。そして湯本君と私とに以上の目的を話して、一応今までの水素の仕事を中止して、飛行船爆破の原因探究に必要な実験をするように命ぜられた。もっとも水素の取り扱いには馴れていたし、火花による点火装置なども揃っていたので、仕事にはすぐ取りかかることが出来た。

この飛行船爆破の原因を調べた話は、『球皮事件』という題で書いたことがあるので略するが、先生の科学者としての頭と眼、芸術家としての勘、愛国の至情などが渾然として一体となり、このどうにも手のつけようのない難問を数ヵ月のうちに美事に解決されたのであった。