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「てらだとらひこのついそう」あとがき

寺田寅彦 わが師の追想

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『寺田寅彦 わが師の追想』。同一底本的分册已合并为一书。收入:「寺田寅彦の追想」後書、実験室の思い出、墨流しの物理的研究、墨並びに硯の物理学的研究。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,239 字 · 65 页

青空文庫

白砂糖の層は横の硝子板から見ると、白線になってあらわれ、これが断層の目印になるのであった。壁を引くと、砂はいくつもの断層になって崩れるのが綺麗に見えた。そして一度崩したものを押し上げると、今度はちがった面に断層が出来て盛り上がるので、白線は地殻の褶曲に似たような形になるのであった。

この実験はその後、宮部君によって理化学研究所の実験室で数年続けられた。色々な性質の粉について調べる必要があるというので、白玉粉だの小豆粉だの砂糖だのと沢山買い込んだら、理研の会計の人から、これじゃまるでお汁粉の研究ですねと言われたそうである。

こういう話を書いておれば切りがない。大学の一年間と、その後引き続いて理研の三年間とは、私にとっては楽しい思い出の泉である。もっとも理研の第一年は、ちょうどその年から先生が理研に研究室を持たれた年であった。航空研究所や地震研究所での活溌な研究生活もまだ始まらない前で、私は随分忙しい思いもした。しかし千載一遇の良い訓練を受けることが出来たのであった。いつも感謝の念をもって当時を思い返すことの出来る自分は幸運であった。

先生が亡くなられて、自分は他の多くの弟子たちと同様に、随分力を落とした。