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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页
丸茂の家で、釘隠しの金具を見たとき、それが初めてではなく、まえにいちど、見覚えがあるように思った。たしかに、どこかで見たことがある。それも、かなり印象ぶかい条件のなかで、……そう考えたものであるが、今ようやく、その記憶がよみがえってきた。それは山村座の、あの茶屋でのことであった。
今日も主馬が来るまで、彼はそこに寝ころんでいたが、その日も同じように、横になっていた。そして一つおいた向うの座敷で、若い女がすはだかになって、三人の男の召使に、躯じゅうを拭かせていた。そのとき、手拭をゆすぐのに使った、蒔絵の半に、そのふしぎな紋が付いていた。
――たしかに同じだった。
見馴れない形だから、誤りはない。
――実は。
と話しかかったが、そこでまたふと、その半※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)の紋を見たときも、それよりまえに、見たような気がしたことを、思いだした。
――そうだ、あのときもそう思った、どこかで見た覚えがあるように……。
そう気がついたし、若い女性の裸を見たということが、ちょっと口にだしかねて、半之助はあいまいに言葉を濁した。