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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页
「御役替えだそうだが」
松室が半之助に云った。
「今日はわれわれが招待するわけか、それとも安倍の招待か」
「どっちでも同じことだろう、早く汗を拭いて坐るがいい」
主馬が答えた。
二人が浴衣になり、膳がはこばれ、ようやく盃がまわりだした。村田がおそいがどうしたろう、などと云っていると、なをがあがって来て、「青山さまにお客さまです」と云った。
「お武家さまがお三人で、下まで来て頂きたいと仰しゃっています」
「侍が三人、誰だろう」
主馬は首をかしげながら立ちあがった。
主馬が下へおりていって、まもなく、なをが彼の刀を取りに戻った。
「どうしたんだ」
「なんだかわかりませんけれど、いらしった方たちといっしょに、どこかへおでかけのようでございます」
「でかけるって……」
「はい、着替えも此処でしろ、刀も持って来させろって、お三人が青山さまを取巻いて」
「ちょっとみて来る」
重兵衛が立とうとした。
「いや待て、おれがゆこう」
半之助は彼をとめ、刀を右手に持って立ちあがった。
――身の破滅。
そんな言葉が頭にひらめいたのである。階段をおりてゆくと、店先に主馬が立ち、その左右を三人の侍が、いきごんだ姿勢で、とり囲んでいた。