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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页

青空文庫

――ゆき先だけでもつき止めておくほうがいい、あとを跟けよう。いちどはこう思った。

しかし次に、同じ危険が村田にも迫っている、ということを考えた。主馬はすでに捉まったのである。それはもうできた事だ。それよりも村田に知らせて、村田を危険から救うほうがいい、村田に主馬を助け出す法があるかもしれない。こう思いなおした。

――だがどうする、村田は此処へ来る筈である、家にはもういないだろう、といって、此処へ来れば、どこかに待伏せている者があるかもしれない。

主馬がつれてゆかれるのを、見送ってから、二階へあがるとすぐに、表のほうの窓へいって、外のようすを窺った。

「どうしたんだ」重兵衛が不審そうに、「青山がどうかしたのか」

こう云って立って来ようとした。半之助は手まねで抑え、そのままややしばらく、外を見ていた。すると、主馬がつれ去られてから、殆んどひと足ちがいで、木挽橋のほうから、村田平四郎の来るのが見えた。

――知らせに走るか。

しかし浴衣ではとびだせないし、まにあわないかもしれない。

――無事に来て呉れ。

道の左右に眼をやりながら、半之助はそう祈った。前が休演している劇場だから、道は広く、人通りも稀である。