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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页
肌衣も下のものも、いま脱ぎすてたところらしい。浅黄色の(寸の詰った)肩衣と袴をつけた、屈強の若者が三人いて、一人は脱ぎすてたものを片づけ、他の二人は、半※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)(それは漆塗りに金で定紋を置いた)の水で、手拭を絞っていたが、半之助の眼にはかれらの姿は見えず、そのあらわな裸身だけが、視界いっぱいをふさぐように思えた。
はじめのうち、それは、かなり非現実的な印象であった。ぜんたいがぼうと光暈に包まれた、この世のものでないような白さと、なめらかに重たげなまるみが、眼に止めがたい幻の揺曳のようにみえ、ついで、なまなましくあざやかに、小さな肩とひき緊った胸乳と、きわだって広い腰と太腿とが、眼を奪った。
たしかに、こちらが見るというより、眼を奪われたという感じであった。
このあいだに二人の若者(それはどちらも美男というにふさわしかった)が、手拭を絞っては、彼女の肌の汗をぬぐっていた。全身をのこる隈なく、巧みな馴れた手つきで、拭いていたのであるが、半之助にはそれが殆んど眼につかなかった。むしろ、あらわな裸身を、さらにあらわにしてみせるようでさえあった。