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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页

青空文庫

にも拘らず、それは半之助を、かつて経験したことのない、罪に似た感覚のおどろきと、恐怖にちかい魅惑とで押し包んだ。

「ばかな、なにをそんなに」

やがて彼はこう呟いた。そんなことに気を奪われている自分が、ふと自分で恥ずかしくなったのである。

「――つまらない」

吐きだすように云って、起きなおって、片方の腕の、痺れたところを揉んだ。

下の裏手で、なにやら人の騒ぐ声がした。半之助はぼんやりそれを聞きながら、頭はまた同じところへもどっていた。裸になって汗を拭くことは、たしかに異常ではない。けれども女がそのような場所で、たとえ召使にもせよ、三人もの若者の前に素肌をあらわし、かれらの手で汗を拭かせる、というのは、少なくとも尋常とはいいがたい。

――いったいなに者だろう。

武家でないことは、若者たちが、浅黄色の肩衣をつけていたことで、ほぼわかる。またかれらの、どこかしらものものしい態度から、遊芸人の類でないことも、察しがついた。おそらく富裕な町家の者だろうが、人の妻だろうか、娘だろうか。

――眉はおとしていなかった。

しかしそうではない、眉はなかったようだ。こんなふうに思っていると、乱暴に、どたばたとおいそがあがって来て、「おつれさまですよ」