轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

「夕刊朝日新聞」1951(昭和26)年6月18日~9月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,360 字 · 251 页

青空文庫

「でたらめばかりだ」

「さようでございましょうか」

和助という若者は少しばかり不服そうに、「鋳物師谷の隠居は、その場にいて拝見したと申しております、仔牛ほどもある大猪で、危なく殿さまが牙にかかるところを」

「でたらめだ、危なかったのはこのおれだ」

権之丞は傷痕へ手をやった。

「殿さまが鉄炮で仕止めて下さったが、さもなければ、そのときおれは、ずたずたに裂き殺されるところだった」

「さようでございましょうか」

和助の口ぶりは、明らかに、信じられぬ、という調子であった。だが、そういうとき、しいて反問することは、相手のきげんを損ずる、と承知しているらしい。ややしばらく背を洗ってから、

「――早く山へ帰りとうございます」と独り言のように云った。

権之丞はまた黙りこんだ。むっとした表情で、風呂舎から出ると、持参の古びた帷子に、そまつな葛布の袴をつけ、茶を啜る暇も惜しいというふうに、「比女さまに、すぐおめどおりが願いたい、と申上げて呉れ」

こうせきたてた。取次ぎは、休んで待つように、という返辞をもって戻った。

「唯今、御来客ちゅうでございますので」

権之丞は苛立たしげに、茶の代りを命じた。