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さこんのいかり

左近の怒り

坂口 安吾

「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页

青空文庫

その女賊って人があの別荘の本当の主人じゃないのかしら。その人があなたに云ったように。そしてドヤ/\のりこんできた人たちがその人の敵じゃないのかしら」

「ウーム。それは思いつかなかったなア。なるほど、それもあるかも知れないが、しかしだね、彼女がクグリ戸にかけたカンヌキが外れていて一同がそこから悠々乱入したのはどういうわけだろう。その前に彼女がそこから逃げている証拠に相違ないと思われるが」

「そこが変ねえ。じゃア彼女が白昼堂々と自動車を乗りつけたのは?」

「それを彼女ときめちゃうから変なんだ。彼女かどうか知りもしないで」

とタコスケがズバリと一言急所をついた。三人のうち最も冷静なのはタコスケなのである。紙芝居の推理眼で育ったタコスケ、街のタンテイの素質がある。

「自動車のナンバー調べる方法ないかしら。どこかで見たような顔だわ。どうしても思いだせない。夏川さん、似てる人、思いつかない?」

「映画を見たこともないから」

「ねえ、夏川さん。スパイ事件が警察に知られてこまるのは盗まれた物が秘密の物だからでしょう。犯人が女賊でなくとも届けることができないはずよ。してみれば、夏川さんがまきこまれる意味はなくなると思うのよ」