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さこんのいかり
左近の怒り
「講談倶楽部 第六巻第九号~第一一号」1954(昭和29)年7月1日~9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,454 字 · 95 页
新聞や雑誌の写真でナジミの顔だ。そして葉子の毎日の仕事に最も関係の深い顔なのだ。住田嘉久馬であった。バクダン・メモの筆者である。
女中たちは葉子の寝台へ玉子をねかせた。しかし玉子はねていない。寝台の上を苦しみもだえて這いまわる。落ちそうになる。女中たちはそれを寝台の中央へ置きもどすのにかかりきっている。
「ジュウタンの上へ置くわけにもいかぬな」
住田は落付いた声でポツリと一言をもらしたが、ふりむいて静かに部屋をでていった。自動車が医者をつれてきた。いかにも田舎の医者然とした頼りないような人物だ。つづけさまに二十本ぐらい注射した。
「ふだんお脈を拝見しておれば特別に手当ての仕様もあるのですが、奥さまはゼンソクがおありですか」
「いいえ」
「とにかく強心剤をうちつづけましょう。発作がおさまってしまえば安心だと思いますが」
診察のヒマなどはない。這いつづけて苦しみもだえているのだから。医者はまた注射を打った。するとようやくいくらかおさまった様子である。住田はまたいつのまにか現れてジッと病人を見ていたが、
「落付いてきたね」
「ハ。どうやら。これだけ打って落付かなくてはちょッと重大ですが」