轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

左手だけですから、片仮名以外は書きません。ところで、妙なのは、リンタク屋に見せた紙片も、運転手に示した紙片も、ヘタクソな字で、それはまるで左手で書いたような字だそうですが、漢字で書いてあったと云います。特に小田原のタクシーの運転手は、よく記憶していました。小田原、小峰、倉田由之、漢字でこう書いてあったと断言しました」

「チリ紙へ、かね」

「いゝえ、ポケット手帳をちぎったような紙キレだったと云っています」

「安彦君の所持品に手帳はあるかね」

「ありません。チリ紙以外には、いかなる紙もありません。鉛筆だけはありました」

「すると、病院で書いてきたのだね」

「そうかも知れません。しかし今日、実家へ帰るということは、療養所の誰にも打ち明けていません。新聞を読んで療養所の人たちは、薄々察していましたよ。小田原で殺された倉田安彦が、療養所を失踪した織田秀吉だろう、と」

「なるほど」

大矢主任は考えこんでいたが、

「左手で書いたような漢字。それは、誰が証言したのだね」

「タクシーの運転手です。野村という、四十ちかい分別深い男で、私がききもしないのに、左手で書いたような金釘流の、と言っていました」