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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

六分という微細な問題ですから、厳密には役に立たないと思いますが、安彦さんの着物を仕立てゝいらしたのは、どなたですか」

「それは起久子さんです。私は主人の着物だけ。起久子さんが安彦さんと定夫さんの着物を仕立てゝいらしたのです。あのころは、まだ結婚前でいらしたし、内気な、裁縫などのお好きな方ですから」

大矢警部は、ちょッと考えこんだ。

「なるほど。もし起久子さんが生きてらしたら、安彦さんの身長を御存知でしょうか」

由子の返答はなかった。

大矢主任はたたみかけて、

「奥さんは、裁縫なさることによって、御主人の身長を御存知でしたか」

「いゝえ、裁縫は身長を知る必要がありませんわ。私はとうとう主人の正確な身長を知りませんでした」

「写真から身長が分らないかしら?」

美津子が、こう叫んだが、すぐ考えこんでしまった。顔をあげると、笑いだして、

「直立不動の写真なんて、ないわね。でも、アルバム、さがしてみましょうか」

「そうですなア。現存する誰かとの比較。うまく並んで、直立していればいゝが。着物を着ている立像から、着物の寸法がわかることによって、クビから上、足の寸法が割りだせるかなア。