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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页
又、誰も返事をしようともしない。
大矢捜査主任はあせらずに、ゆっくりタバコの火をつけた。そして、ニコ/\と定夫に笑いかけた。
「君だけは、とにかく、犯人を名ざしてくれたね。ねえ皆さん、定夫君は、あの犯人は安彦氏だと云うのですよ。その理由は?」
次の言葉を、定夫にうながした。これは、ちょっと、まずい方法だった。学校で、教師に威張られるのが何よりキライだったという定夫は、小学生に問いかける教師のような命令的な方法に、プイと横を向いて、バカにするな、という顔をした。
大矢主任は失敗に気付いたから、こだわらず、自分で話をすすめた。
「定夫君はあの日、映画を見て日の暮れた堀端を歩いてきました。すると箱根口の方から安彦氏が歩いてくるのに会いましたが、安彦氏は右手の親指を痛めたらしく、しきりにもみながら歩いていたそうです。定夫君を見ると、慌てゝ指をもむのをやめて、なんでもないフリをしましたが、そのことで定夫君は疑ったのです。素人はニギリコブシをつくって人をうつ場合に、親指を四本の指で握りこむのが普通だそうです。だいたい、日本式のニギリコブシは、たしかに、そうなんですね。