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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页
これでボクシングやると、ヘタすれば親指をポキリと折ってしまう。まったく、その通りです。それで、定夫君は、安彦氏は公一氏をブン殴って、親指を痛めたと判断したのです。この推理について、皆さんのお考えは、どうでしょうか」
こう云って、大矢主任が一座を見廻していると、やがて顔をあげたのは由子であった。
「犯人かどうかは別問題として、安彦さんが、親指を痛めておりましたのは、私も気付いておりました。あの日以来、安彦さんは、食堂へ見えず、お部屋へ食事を運ばせて、食事していらしたのですが、指の負傷を隠すためではなかったでしょうか。なぜなら、洗面所でふと見かけましたら、歯ブラシを中指と人差指にはさんで使っておられたのです。慌てて隠すようになさるので、却って気づいたのでした。どういう場合か忘れましたが、署名かなにか、ちょッとしたものを書く必要がありました時にも、そこにインクもペンもあるのに、わざわざ自分のお部屋へ行って書いてらしたのです。親指を使う場合に限って、人前でなさらないので、私はなぜかしらと思っていました。けれども、犯人などゝ疑ったわけではありません」
由之は、なんだ、ツマラン、という顔で、疳癖らしく、頬の肉をビクビク動かして、口をいれた。