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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页

青空文庫

「さア、どうですかね。一番小量だからクサイことは事実でしょう。しかし、この事件には、常に裏がありますよ。又、裏の裏も、その又、裏さえありますぜ。犯人らしく見えるのは、同時に、そう見せかける誰かの作為でもありうる。美津子さんの場合もそうでしょう。ところがその作為を、他の犯人がやっているのかも知れませんし、又本人自身がやっているのかも知れません。まったく、すべて表面だけでは済みませんし、その裏だけでもおさまりません」

「なるほど。しかし、君はこの暗示をどう解釈しているのかね」

「まア、あんまり、こだわらず、当分そッとしておく方がいいですよ。しかし、三人の飲んだ分量が、ちょッと違いすぎますよ。どうも薄気味の悪い話ですよ」

そんな話をしているところへ、電話のベルが鳴った。

受話器をとりあげた刑事が、

「ハ、そうです。エ? 倉田さんですか。エ、なんですって、ハ、ハ、すぐ参ります」

ガチャリと受話器をおいて、大矢主任に向かい、

「又、倉田家に事件ですよ。久七らしい声で報らせて来ました。定夫が苦悶しているそうです。何か中毒らしいそうです」

一座はサッと蒼ざめてしまった。