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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页
十一時二三分前でございました」
スミ子の部屋の置時計は十五分ほどすすんでいた。警察の電話が事件の報知をうけたのは、十時三十五分ごろであった。
スミ子は屍体に手をかけて抱き起してみたが、すでにことぎれていたので、また元の通りに俯伏せにして、電話をかけたのだという。そのとき手が血によごれたので、便所で手を洗った。その怖しさに、しばらくボンヤリして、頭が空転するばかりであったと言うのである。
「手に血のついたのが怖しかったのかね」
「手にも袖口にも血がつきました。私は警察に疑られるのが怖しかったのです」
スミ子は目に敵意をうかべて、思いきった顔付で言いきった。
「お前のお父さんは、どこへ出掛けたのか知らないかね」
「知りません」
また、敵意を見せた。
「お前の兄さんは何時ごろに家をでたかね」
「兄さんは夜釣りに出かけました。それが兄さんの仕事ですから。出掛けたのは七時ごろです。夜明け方まで帰りません」
そのとき、巨勢博士が、きいた。
「今夜、九時半ごろかね。倉田定夫君のところへ女の人から電話がかゝってきましたね」
スミ子の目にビリビリと驚愕が走った。電撃をうけたようだった。