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ふくいんさつじんじけん
復員殺人事件
「座談 第三巻第六号~第七号、第四巻第一号~第三号」1949(昭和24)年8月1日~9月1日、1950(昭和25)年1月1日~3月1日(未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 页
「誰だか、知りません。然し、大兄さんと坊やを殺した犯人が殺すのです」
「なぜ」
「なぜなら、安彦兄さんは、その犯人を知っているからです」
定夫はヘッ、クソという面持で、沈黙した。すると、パイプをくゆらしていた巨勢博士が、まるでもう埒もない世間話でもするような屈托のない様子で、ニヤニヤと美津子に話しかけた。
「失礼ですが、お嬢さん。安彦兄さんが犯人を知っていると仰有るのには、証拠があるのですか」
「ございます。ハッキリとした証拠が」
美津子の澄んだ目は、きびしく巨勢博士に向けられていた。
「安彦兄さんに召集令の参りましたのは、昭和十七年の一月末、ちょうど大兄さんと坊やが殺された日から一週間目でございました。警察では、安彦兄さんも犯人の一人として疑っていたかも知れません。けれども、当時の状況として、家内中の殆ど全員が容疑者らしい不利な条件をもっていました。そのくせ、誰一人確たる証拠もありませんので、警察でも、安彦兄さんの出征をひきとめる確信がなかったのだろうと思います。出征の前夜に、安彦兄さんは遺品として、先程御鑑定を願いました手型と、もう一つ、ひそかに私をよび寄せて、一冊の日記帳を手渡しました。