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こいのでんしちろう

恋の伝七郎

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,650 字 · 60 页

青空文庫

んだ、忠さん、男の度胸がいけなかったよ」と、沖田師範へ体当りをしたことから今日までの始終を手短かに語った。「おれは師範に云ったんだ、これはまだ親どもにも内証だから、返辞は必ずおれにしてくれ、どうかじかにおれへ返辞をたのむ、二度も三度も念を押したんだ、それなのにあの師範の奴、まるで当つけのように親父へ手紙をぶっつけやがった」「ひでえことする奴があるもんだ、そいつはそれでも侍なのか」「しかも剣術師範だ、銀之丞にしたってそうだ、あの人がおれを好いているなんて云ったが、もしそれが本当なら、親父があんなことをするのを黙って見ちゃあいねえ筈だ、そうだろう忠さん」「そうだろうと思うなあ、ことによるとあいつめ、伝さんを煽りたててなにかひと芝居書きあがったぜ」「とすると九月二日の試合が、だってあいつがなんのためにこんな手数をかけてわざわざおれと勝負をする必要があるんだ」「そんなこたあわからねえ、あんないんちき野郎のすることはおいらなんぞにゃあ見当もつくもんか、で……腹切りてえのは」「それがさ、村松と勝負をして勝てばいいが、負けたら永井の名誉のために詰腹を切らせると云う