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こいのでんしちろう

恋の伝七郎

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,650 字 · 60 页

青空文庫

ように、銀之丞の腰から白い電光が飛んだ、ひゃっというような声をあげて、伝七郎は二三間うしろへすっ跳んだが、それでもすばやく刀を抜いて身構えをした。銀之丞は唇に冷笑をうかべながら、下段に刀をつけてじりじりと間を詰める、まるで獲物をねらう蛇のような云い知れぬ妖気が、その全身から発する感じだ、これまでの伝七郎なら、それだけですくんでしまったろう、だがいま彼は銀之丞を上から見下ろしている、底の底まで軽侮し卑しめている、だからそんな妖気なんぞはてんで感じないのである、そして彼は大胆不敵にも刀を上段へすり上げた。えい、という気合がとび、銀之丞がさっと斬込んだ、伝七郎は上段の剣を力いっぱい振り下ろした。なんと、斬込んだ銀之丞はそのままつんのめり、伝七郎は刀を持って棒立になっていた、……勝負どころを見たのは三枝である、銀之丞の踏みだした第一の足が石に躓いたのだ、そしてつんのめった銀之丞がそのまま起きないので、よく見ると頭から右の眼へかけて、すうっと斬られていた、「おい伝さん、傷は浅手だ、銀的はまだ生きてるぞ」忠太にそう呶鳴られて、伝七郎は振向こうとした、しかし体じゅうの骨や筋が硬ばって身動きができない、だがそれより先に三枝が、「いいえもういけません、これで勝負はついています」