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あんこくせい
暗黒星
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页
「さて、着更えをすませた娘さんがどこへ行ったと思うね。僕は今度こそ宿屋だろうと考える。田舎娘か何かに化けて、安宿に泊まったんだね」
三島刑事は同僚に話しかける形式で、実は自問自答するのであった。
「本来なれば宿屋なんかに泊まらないで、すぐ汽車に乗って高飛びしたいところだが、東京の駅はどこへ行っても、十二時すぎに発車する汽車はない。夜の明けるのを待たなければならぬ。
夜更けに泊まって怪しまれない宿屋といえば、さしずめ駅前の旅館だ。駅前なれば、翌朝になって汽車に乗るのにも便利なわけだからね。
そこで、僕は、娘さんが目ざしたのは品川駅だと推察するんだ。ここから品川駅はすぐなんだからね。わざわざここまできて、東京駅や新宿、上野などへ戻るということは、先ず考えられない。高輪の古着屋を選んだのは、ただ品川に近いからなんだ。
どうだい、この僕の考えは、あの娘さんは品川駅のそばの安宿に泊まったのじゃないのだろうか」
「そうですね。どうもその辺が図星らしいですね」
若い刑事は先輩の想像力に感服したように合槌を打った。
「じゃ品川だ。駅の近くの旅人宿を片っぱしから調べるんだ。