轻松读懂日语经典作品
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あんこくせい
暗黒星
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」1939(昭和14)年1月号~12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,000 字 · 188 页
その夜八時頃、伊志田氏の書斎の卓上電話のベルがけたたましく鳴り響いた。居合わせた伊志田氏が受話器を取ると、突然、妙にしゃがれた笑い声が聞こえてきた。
「伊志田さん、お前さんが今どんな気持でいるか、おれにはよくわかるよ。ハハハハハ、おれは愉快でたまらないんだ。もう少しでおれの目的がすっかり果たせるのだからね。というのはね、つまりおれの仕事は――お前さんの不幸はまだ終っていないという意味だよ。ハハハハハ、想像がつくかね。おれのほんとうの相手はお前さんなんだよ。これまでの仕事は、いわばその前奏曲みたいなものさ、ハハハハハ、せいぜい用心するがいいぜ」
切れぎれにそんな意味のことを言って、声が途絶えてしまった。ひどくしゃがれた声で、男とも、女とも、老人とも、青年とも、見当がつかなかった。
伊志田氏はそれを聞くと、ほんとうに気が違いそうになった。殺人犯人から電話がかかってきたのだ。しかも、その犯人というのは娘の綾子としか思われないのだ。ああ、なんということだ。たとえあの娘に地獄の悪鬼が憑いているにしても、正気を失って、悪鬼の命ずるままに行動しているにしても、こんな恐ろしいことが世にあり得るのだろうか。