轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
02 第二部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 页
甲斐は弓を構えたまま静かに立ちあがった。立ったまましばらく待ったが、やはり人のけはいもせず、狙撃するようすもなかった、臆病者、彼はまた舌打ちをした。それから、矢をつがえたままの弓を持って、藪の蔭から斜面へ出て、北に向かって歩きだした。
――さあ射て、射ってこい。
一歩、一歩、雪沓を踏みしめながら、さすがに全身が緊張し、腋の下に冷たく、汗のながれるのが感じられた。
突然、足もとから一羽の鳥が飛び立った。
甲斐は危うく叫びかかった。飛び立ったのは雉である。笹の蔭にでもいたらしい、はげしい羽ばたきの音と共に飛び立つと、一文字なりに枯木林のほうへゆき、枝をかすめて、つぶてのように、林の奥へと消え去った。
くびじろは正覚寺(山)と、甚次郎(山)とのあいだに戻ったようである。そっちへ戻ったとすれば、甚次郎から釜ノ川へ出るに違いない。そこから虚空蔵(山)の南麓をまわり、白石川を渡って、沼辺村の山へはいるのが例であった。
雪は午まえにいちどやみ、西の空で雲が切れて、青空が見えた。そのとき西北のほうに、青麻山と、蔵王の雪が鮮やかに眺められた。だが、それはほんの僅かなあいだのことで、まだ青空の出ていないうちに、ちらちらと粉雪が舞いはじめ、たちまち雲が空を掩ったとみると、まえよりも激しい降りになった。