轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

02 第二部

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 112,073 字 · 223 页

青空文庫

――この雪では途中はだめだ。

甲斐はそうみこして、虚空蔵(山)の南麓へ向かい、山つきを迂回して、砦山の西から白石川へぬける狭間道で、待つことにした。

目的の場所へ着くまでに、二度ばかり、うしろに遠く人の跟けて来るのを感じた。甲斐は久兵衛という若者を知らない、どうかしてひと眼その姿を見たいと思って、立停ってみたり、身を隠して待ったりしたが、やっぱり相手は姿を見せなかった。

狭間道へ着いた彼は、山裾の一段高くなった杉林の中へはいり、寝袋をおろして、食糧の包みをひらいた。――そこは虚空蔵の山裾が切れて、砦山の登りにかかるところで、風は二つの山のあいだを、北から吹いていた。したがって、くびじろが南からあがって来ても、そこに人間のいることを嗅ぎわけることはできない筈であった。

甲斐は薄焼と焙り肉を出して喰べた。だが、一枚めの薄焼をまだ喰べ終らないうちに、くびじろがあらわれた。

これまでの経験によれば、そんなに早くそこへ来ることはなかったので、濃密な雪の中からその大鹿があらわれたとき、甲斐はそれがくびじろだとは信じられなかった。

甲斐がくびじろをみつけると同時に、くびじろも彼のいることをみつけた。