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しんやのしちょう
深夜の市長
海野 十三
「新青年」博文館、1936(昭和11)年2月~6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 109,982 字 · 220 页
それがいけなかったのです。男のお友達にも、それから女のお友達にも、だんだん軽蔑されてきました。そして遂にあたくしは分らず屋で異端者のように嘲笑されて来たのです。あたくしはとうとう職業まで失ってしまいました。別の職業につこうとしましたが、如何にも給料が安いので、昔、商館にいて貰っていた給料が、或る約束をも籠めてある法外なものだとは、やっと後になって気がついたのです。そういう豪奢な生活に慣れ切ってしまった妾ですもの、一ヶ月働いて三十円や四十円の給料を得る安い職業なんかに、どうして就けるものですか。だがどうかして食べるだけのお金を得なければならない。そうかといってこの高価な毛皮の外套に別れることなんか、どうして出来ましょう。この外套は現在あたくし自身を価値づけている最大の恩人なんです。蒸暑い夏が来たって、あたくしはこの毛皮の外套を脱ぎはしないでしょう」
女はそういって、肩をふるわせて泣きじゃくった。
「兄さんのところへ帰ったらどうです。兄さんはきっといい人ですよ」と僕はソッと言葉を※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)んだ。