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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

というのは、この二人品川の怪事は、実は一猟奇者の身の上話という丈けではなく、一時は東京中を、いや日本中をさえ湧き立たせた所の、非常に大きな犯罪事件の謂わば序幕をなしたもので、それが今や、本舞台に移らんとしているからである。作者もこれまでの様に、ゆっくりゆっくりと筆を運んではいられなくなって来たのだ。

青木愛之助の細君の芳江は、あの晩愛之助が何故あんな変な様子をしていたのか、まるで腑に落ちなかった。読者も已に推察されている通り、彼女は全く無実であったのだ。ただ、愛之助が余り恐ろしい顔色をしていたものだから、それにつられて、ついこわばった表情になり、愛之助の誤解を裏書きする様な結果になってしまったのだ。愛之助の方で、それ程も、怪物の偽瞞に物狂わしくなっていたのだ。

翌日の夕方頃まで待っても、愛之助が帰らぬので、昨夜の恐ろしい顔色といい、どうもただ事ではないという気がされて、もう居ても立ってもいられなくなった。

そこで芳江は、東京では夫君の最も親しくしている品川四郎を訪ねて相談して見ようと思立った。若しかしたら、品川の所に泊り込んでいないとも限らぬのだから。